映画評…摩天楼を夢みて…哀愁漂う演劇のようなヒューマンドラマ
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ニューヨークの不動産業界を舞台に、不動産セールスマンたちの姿を描く人間ドラマ。監督は「アフター・ダーク」のジェームズ・フォーリー。製作は元コロンビア映画の製作担当副社長で、ホテル業界に転身した後、映画界に復帰したジェリー・トコフスキーと建築・金融・不動産業界で活躍してきたスタンリー・R・ズプニック。エグゼクティヴ・プロデューサーはジョゼフ・カラチオーラ・ジュニア。83年ロンドンで初演され、ピューリッツァー賞を受賞したデイヴィッド・マメットの同名戯曲を「殺人課」などで監督としても活躍する彼自身が脚本化。撮影はファン・ルイス・アンシア、音楽は「愛の選択」のジェームズ・ニュートン・ハワードが担当。主演は「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」のアル・パチーノ、「JFK」のジャック・レモン、「キスヘのプレリュード」のアレック・ボールドウィン。他に「アビス」のエド・ハリス、「ロケッティア」のアラン・アーキン、「ヘンリー&ジューン 私が愛した男と女」のケヴィン・スペイシー、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のジョナサン・プライスが共演。
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タイトルの「摩天楼を夢みて」から想像する華やかさは微塵もない映画でした。
詐欺すれすれの商売(不動産ブローカー)を生業としているセールスマンたちの物語。
生き馬の目を抜くといわれる不動産業界のセールスマンの世界を描いた作品だから、いつも誰かが喋り捲っている。電話に向かっても、カモとなる客に向かって、社内でも…
大まかなあらすじは…
NYの不動産会社ミッチ&マレー社のとある支店の1日。かつては一線級の営業マンだったベテランのレビーン(ジャック・レモン)、同僚のモス(エド・ハリス)とアーナロウ(アラン・アーキン)と支店長ウィリアムソン(ケビン・スペイシー)たちを前にして、本社から来たやり手セールスマンのブレイク(アレック・ボールドウィン)が彼らの成績不振を罵倒し始めた。
そして、そんなムチの後にはアメが。月間成績トップの者にはキャデラック、2位にはナイフ・セット。そして3位以下は「クビだ」と宣言。
かつてはトップセールスマンであったレービンを演じるジャック・レモンの、過去の栄光にすがりながらも、あの手この手で前線に向おうとするその演技には哀愁が漂い、彼がみせる姑息な電話セールスのテクニックはある意味で切ない。でも、そのテクニックは意外と勉強になるかも。
とても豪華なキャストでしたが、彼らの演技にはピンと張り詰めた緊張感があり、男のプライドと人生を背中に背負ったドロドロの人間臭さがありました。
アル・パチーノに乗せられて契約してしまったジョナサン・プライスが翌朝、キャンセルに訪れた時のアル・パチーノがみせるセールステクニック。そこにジャック・レモンが絶妙に絡んで、反目していた者同士、ここに来てみせる共に戦う者同士の阿吽のプレー。台詞の巧みさ。
とても行動範囲の狭い映画で、ほとんど背景が変わりません。8割方は事務所で、2割がその他。純粋に演技だけで、その面白さを演出していますので、まるで演劇を見ているようでした。
全員に哀愁漂う、とても良い映画でした。