- リーダーの値打ち
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第一章 なぜ、こんなに頑張っているのに楽にならないのか?
第二章 日本には、なぜビジョンを語らないリーダーばかり生まれるのか?
第三章 駄目な人がトップに祭り上げられるメカニズム
第四章 繰り返される日本史という時間軸と日本社会の
グローバル化という空間軸
第五章 マネジメント能力のアジャストと成長セクターのジレンマ
第六章 理想のトップは「育成」できるのか
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本書は、独特の視点と切り口で、世相をシニカルに斬る人気ブロガー「
切込隊長」こと、
山本一郎氏の著書。
ぼく自身もいつもブログや
Twitterで笑わせていただいてます。
して、その内容はと言うと…
そのシニカルな雰囲気で「日本ではなぜバカだけが出世するのか」を解き明かしてくれることを期待すると、肩透かしにあいます。多少の自己啓発的な要素を含んでおり、いきなり第1章から「事実の自分と向き合う」「自分の衝動を把握(欲求)を見つけ出す」 作業を勧めていますので。 しかし、この肩透かしこそ「日本ではなぜバカだけが出世するのか」に対する解答のはじまりであり、組織とリーダーの問題を考えるためには「あくまで自分の事として捉える」必要があるから、ということが分かります。
例えば政治の世界でも、リーダーになる前の一政治家としては存在感があった人でも、リーダーになった途端にノロマの亀のようになるということが多いですよね。(どこかの総理?)
ビジネスの世界でいえば、これは本書でも一部触れられていますが、東電、
大王製紙や
オリンパス問題でも、大企業に所属するエリートと言えど、経営者になるとしがらみでがんじがらめになって、思うような経営ができないまま退く、そんな事例は後を絶ちません。
もっとミクロな世界でいえば、営業マンとして優秀で、経営幹部にも臆せずに噛みついていたような人が、いざ部長となった途端に、飼い犬のようになってしまう。それどころか、自分が一般社員だったときに批判していたようなあり方を再現するようなことも。
しかし、人間がすることです。僕とて人ごとではありません。言い換えると、私たちがもしその立場に行ったときに、そうなる可能性があるということです。
なにか新しいことにチャレンジするリスクは高くなっていますので、組織も個人もできるだけ安パイで確実な手段を選ぼうとします。そうすると、元気がなくなり、チャレンジ精神もなくなり、充実感は低下します。しかし、それが堅実で安全なようにみえても、実は時代の変化への適応力を失って、命取りになるというリスクもあります。個人的にはそっちのリスクのほうが大きいかと…とくに後者のほうは、そのリスクに気がつかない場合も多いです。
そんな中でのリーダーの役割とは何か。
それは本書にも書かれていますが、ビジョンを見せる(語る)ことです。
分かりやすく言えば、例えば今苦しかったとしても、
「3年後には○○にするから頑張ろう!」
「このまま続けていけば○ヶ月後には○○になってるから、踏ん張ろう」
と明確に言えるかどうか。そしてそれを浸透させることができるかどうかです。
これも度合いはなかなか難しくて、とんでもない目標であれば、それは目標ではなく「夢」で、それを語るリーダーは単なる夢想家です。(近くにいませんか?笑)
かと言って、あまりに近い部分ばかり語られると、どこにゴールがあるのかが分からずに、気力やモチベーションが続きません。
だからこそ、入念にビジョンを打ち立てて、それを浸透させることは重要です。
山本一郎氏は、ブログの論調と違って、できる限り「真ん中」に立って、両方の視点から見て考えられることを書かれているように思います。(ブログでは偏っておられますが… 失礼!)
だからこそ、少し固い感じがしながらも、本質に触れられているオススメの一冊です。