書評…ザ・ニューリッチ…総資産と幸せは比例しない
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第1章 ニューリッチの「ハウスホールド・マネジメント」―いまどきの「執事」養成法
第2章 ニューリッチを生み出す原動力―即席企業家の時代
第3章 ニューリッチへの道―ミニチュアハウスで大富豪になったエド・バジネットの場合
第4章 ニューリッチの暮らし―「働く有閑階級」ティム・ブリクセスの場合
第5章 ニューリッチからの転落―億万長者から劇的に転落したピート・マッサーの場合
第6章 ニューリッチの社交界進出―新旧富裕層の対立
第7章 ニューリッチの消費競争―財力の証し
第8章 ニューリッチの慈善活動―寄付に成果主義を求める
第9章 ニューリッチが政治を変える―リベラル派の新しい「黒幕」
第10章 ニューリッチのお金の悩み―富が不安を生む構造
第11章 ニューリッチの子供たち―富がもたらす子育ての憂鬱
第12章 富の格差とニューリッチの未来―カーネギーの夢は実現するか
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著者は1年をかけて国じゅうを旅し、資産総額1千万ドル以上のリッチスタン人を取材した結果、旧来の富裕層とはまったく異なる新しい富の文化を発見して、この本を執筆されたそうです。
<ニューリッチとは?>
資産1000万ドル以上の新富裕層のこと
アメリカの資産100万ドル以上の世帯は、1995年から2004年までの10年間で倍増し、900万世帯を突破し、アメリカの総世帯数の1%に迫る勢い。
<リッチスタンとは?>
富裕層が形成する独立国家
リッチスタン人は資産家ではなく、ミドルクラスやアッパーミドルクラスから自力でのし上がってきた人々
*その階級
ロウアー・リッチスタン:純資産100万~1,000万ドル 750万世帯
ミドル・リッチスタン :純資産1,000~1億ドル 200万世帯以上
アッパー・リッチスタン:純資産1億~10億ドル 数千世帯
この大部分を占めるのが、まだ若くて、勤勉な金持ちたち、すなわちニュー・リッチと呼ばれる人々で、自分たちだけの別世界、バーチャル国家を形成しているようです。
そんな方々の消費の一例を。。
<世界最大の自家用クルーザー>
船の大型化競争により150フィート以上の新船の注文はここ10年間で倍増し、造船業界は未曾有の好景気に沸いている。
<自家用ジェット機>
自家用ジェット機の売上は、1995年の33億ドルから2005年には130億ドルに伸びている。
2年待ちでなければ買えず、中には自分の待ち順を後から来た待てない客に100万ドルもの値段で売り渡すケースもあるそうです。
ニューヨーク周辺の週末の空港はこうした自家用ジェット機の待機で大渋滞だとか。
<ロールスロイス>
1998年にBMWに買収されたロールスロイスは2003年に新型車「ファントム」を発表。
価格は32万ドルの高性能の車で、雇った運転手にだけ楽しませるのはもったいないとのことで今やオーナーの95%が自分で運転するそうです。
リッチスタン人にとってBMW、ジャガーといった典型的な高級ブランドはほとんど普通のクルマなのだとか。。信じられません。
<フランク・ミュラー>
富裕層だけが知っているブランドの一つでアメリカでの年間販売数は4,500個程度。
取り扱いは小さな専門店で予約制。なにせ高価なのでごく少数の限られた人しか持てない。一番安いステンレス製のクォーツ腕時計で4,800ドル、いま一番高い製品は60万ドル以上する。
形もユニークなら、機能もユニーク。たとえば人気商品の一つ「クレージー・アワーズ」は、文字盤の数字がめちゃくちゃな順番に並んでいる。12のあるべきところに8、6のかわりに2といった具合。
こういう場合、注目を浴びるためのフランク・ミュラーと時間を知るためのもう一つの時計が要る・・・。
などなど。とにかく驚きです。
しかし、そんな消費をする一方で、彼らは質素な一面も持ち合わせているそうです。
価値観の多様化という言葉がよく使われます。
ポルシェに乗ってユニクロに行く
文化住宅にレクサスが停まってる。
日本や世界を見渡しても、そんな違和感のある光景がよく見られるようです。
私は富豪ではありませんので、あくまで伝聞などの情報ですが、昔のお金持ちは良くも悪くも「あからさま」だったように思います。
ブランド物に身を包み、アクセサリーをつけ、高級車に乗り、大邸宅に住み、高級レストランでワインを飲む。
そんな方々が、バブルで一旦リセット。
そしてIT産業などに見られる新しい世代が、勢い良く財を成してきました。
そんな方々は、いきなり大金を手にしたので、今までの生活スタイルをなかなか変えられない。
どこかでは贅沢をしてみるものの、根本的な素朴さが抜けずに、それが前述のような違和感のある光景に繋がっているのだと思います。
でも私は、それは良い事だと思います。
どれだけ財産を持っていても、人の目ばかり気にして、見栄の消費ばかりを繰り返していては、いつまでも豊かになれない気がします。
なぜなら、人との比較や、欲求には終わりが無いからです。
どんな立場にいても、自分の価値観と感覚に基づいて消費し、行動する。
ある意味、そんな「地に足が着いた」あり方が、これからは重要なのではないでしょうか。
最後に。
「幸せとは総資産に比例するものではない」
それを認識させてくれた本でした。
ごちそうさまでした。