映画評…ウォール街 … 全て手に入れた。そして、俺はだれ?なんだ
<作品について>
一攫千金を夢見る若き証券マン、バド(C・シーン)は、業界のフィクサー的存在である大富豪ゲッコー(M・ダグラス)に取り入ろうと必死だった。父(M・シーン)の勤める航空会社の情報を流したことによって、その夢はかなえられ、バド自身も大金を手にするが……。O・ストーンが、策謀渦巻く証券業界を舞台にしたサスペンス・ドラマ
興味深い映画でした。
まず象徴的なシーンについて、書きます。
一攫千金を夢見て野心に燃えるバドが、ゲッコーと手を組み、実際に仕事で成功して、大金を手にし、高級マンションに住み、美女と付き合えるようになった。
しかし、そんな彼がベランダで言った一言。
「 Who am I? 」
最初私は、「なんで?」と思いました。
「あなたは、望んでいたものを全て手に入れたじゃないか!?」と。
しかし、客観的に考えてみると、
「 全てを得て、何をしたかったのだろう。 」
「 全てを得て、どうなりたかったのだろう。 」
それが決まってなかったのではないかと。
だからこそ、全てを手に入れたときに、そこから何をしていいのか、自分は何者なのかが分からなくなる。
非常に興味深い事です。
一般的に金、モノ、地位、オンナは欲望の対象です。
でも、あくまでそれは物質的なものであった、それらを「手に入れてからどうするのか?」のビジョンがないと、自分の人生が行き詰ってしまう。
要するに、表面的に分かりやすいお金や名声ではなく、「自分なりの成功」と「自分なりの豊かさ」を定めておかなければ、永遠に幸せにはなれない。
この「自分なり」が重要です。
人からどう見えるかが重要ではありません。
さもなければ、際限ない欲望に向けて走り続けるだけです。
自分は何のために生きて、何を成し遂げて、何を得て、どうしたいのだろう。
それを見直したいと思います。
そして最後にもう一つ。
なかなか仕事で成果の出ないバドが父親が入り浸るバーに行きました。
お金を借りるためです。
バドは野心だけは持っているので、勝気で言いました。
「 そのうち、俺を誇りに思う日が来るよ。 」
そんなバドの言葉を聞いて、父親が言った一言。
「 自分で自分を誇れる人間になれ。 」