書評…唯脳論…「自分」じゃなく「脳」が現実を動かしてる??
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はじめに
唯脳論とはなにか
心身論と唯脳論
「もの」としての脳
計算機という脳の進化
位置を知る
脳は脳のことしか知らない
デカルト・意識・睡眠
意識の役割
言語の発生
言語の周辺
時間
運動と目的論
脳と身体
引用文献
おわりに
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これは書いてあるテーマが難しいので読むのが大変だった…
でも実はものすごくわかりやすい本で、何がすごいかと言えば、ものすごく難しい事をとても簡単に書いてあるのがすごいところ。ただ自分にとってはそれでもまだまだ難しい… 「脳」について言及されるのがブームな昨今ではあるけど、この本はなんと20年前に書かれたものであるというのが驚き。
まず、人間の思考は当然ながら脳に大きく依存してる。人間が何かを認識するとき、それを「脳の外にある現実」だと思いがちだけど、実際には「脳の中にある現実」を見ているだけなんだ、という主張がある。そう考えると、同じ現実を目の前にしても、その捉え方が個人によって違うのは合点がいくな。うん。
「ヒトの作り出すものは、ヒトの脳の投射である」
これも本書の中で著者が繰り返し指摘することだけど、現代では世の中にある物のほとんどが「脳そのもの」になってしまっているということ。うーーん、まだ分かりにくい… さらに噛み砕くと、今の社会にあるものは全て「脳の産物」という事。あらゆる物は人の脳の中で考えだされ、生み出され、作り上げられたものだと。そう考えれば分かる。これも何となくは理解していて当たり前のように感じることだけど、いざ言葉にされると「あ~~ そうなんだよな」とビミョーなしんみり感と共に納得した。
さらに人間の思考の基本には視覚と聴覚がある。人間はこのふたつで世の中を理解するときに、「構造」と「機能」のふたつの切り口で考えるのはそれぞれ視覚と聴覚に対応しているのではないかと指摘もある。「構造」とは時間軸のない3次元の情報のことであり、「機能」とはあるデータが時間軸にそってどういうように変化するかという情報である。視覚と聴覚の情報処理から人間の自我や言語が生まれたに違いないという仮説はとても面白いし、何となく納得するので読んでみてほしい。
で、本書の結論を自分なりに考えてみると、結局人間は脳で考えることしかできず、何事も脳の機能に誘導されてしまう。これは機能上どうしようもないことだという事だ。これだけはわかっていても止められない。なんだかみんなが知ってる結論を書いてるようだけど、ここまで脳の機能を解明した上で理解した結論と、「みんなが知ってる常識」的なところで理解してる結論では大きく違うと思うのだ。これは一度読んでみてほしい。
もう一回読むかどうかは分からない…
でも家に保管する。