シルタス!

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書評…スティーブ・ジョブズⅠ&Ⅱ…偉大なる反逆者から学ぶこと

-------------------------------- 第1章 子ども時代 捨てられて、選ばれる 第2章 おかしなふたり ふたりのスティーブ 第3章 ドロップアウト ターンオン、チューンイン 第4章 アタリとインド 禅とゲームデザインというアート 第5章 アップルI ターンオン、ブートアップ、ジャックイン 第6章 アップレⅡ ニューエイジの夜明け 第7章 クリスアンとリサ 捨てられた過去を持つ男 第8章 ゼロックスとリサ グラフィカルユーザインターフェース 第9章 株式公開 富と名声を手にする 第10章 マック誕生 革命を起こしたいと君は言う…… 第11章 現実歪曲フィールド 自分のルールでプレイする 第12章 デザイン 真のアーティストはシンプルに 第13章 マックの開発力 旅こそが報い 第14章 スカリー登場 ぺプシチャレンジ 第15章 発売 宇宙に衝撃を与える 第16章 ゲイツとジョブズ 軌道が絡み合うとき 第17章 イカロス のぼりつめれぱ墜ちるだけ 第18章 ネクスト プロメテウスの解放 第19章 ピクサー テクノロジー・ミーツ・アート 第20章 レギュラー・ガイ 凡夫を取り巻く人間摸様 第21章 『トイ・ストーリー』 バズとウッディの救出作戦 -------------------------------- 第22章 再臨 第23章 王政復古 第24章 シンク・ディファレント 第25章 デザイン原理 第26章 iMac 第27章 CEO 第28章 アップルストア 第29章 デジタルハブ 第30章 iTunesストア 第31章 ミュージックマン 第32章 ピクサーの友人 第33章 21世紀のマック 第34章 第1ラウンド 第35章 iPhone 第36章 第2ラウンド 第37章 iPad 第38章 新たな戦い 第39章 無限の彼方へ さあ行くぞ! 第40章 第3ラウンド 第41章 受け継がれてゆくもの -------------------------------- 本書は僕が敬愛するスティーブ・ジョブズの伝記。 2004年に取材嫌いで有名なジョブズが著者のアイザックソンに「ぼくの伝記を書いて欲しい」と、直接頼んで書かれたものです。 作者はまだ働き盛りのジョブズに「君はまだキャリアの途中じゃないか。いまじゃない。10年後か20年後か、君が引退する頃に書くよ」とやんわり断っていたようですが、しかし、アイザックソンはその時、ジョブズが膵臓癌の手術を控えていることを知らなかったそうです。 どうして私(アイザックソン)に依頼したのか」を聞いたときにジョブズは「話を聞き出すのが上手だろうと思ったからさ」と答えたといいます。アイザックソン自身もこのような答えが返ってくるとは思ってもみなかったと書いていますが、これは褒め言葉でしょうね。 でも少し意地悪な見方をすれば、全てをコントロールしたがるジョブズの事なので、「話を聞き出すのが上手だろうと思ったからさ」という答えは「君はお人好しだからさ」と言っているのと同義に思えてきます。真相はいかに… ここまで詳しく書かれたものを読むのは初めてだったのですが、もっと単純にドラマチックな人だと思っていました。もちろん才能豊かでクリエイティブであることには間違いないし、疑う余地もありません。それぐらいすばらしい人物ですし、歴史の教科書に出てきてもいいでしょうね。(本当にでてきそう。。) でも、それだけじゃなく、色んな表情が見えてきました。 そんなスティーブ・ジョブズの「光と影」とも言える人生を書き綴っています。 それこそ人の恨みや反感を買いながらも、長きに渡って自分が思う方向に進んできた。結果的に大成功したから良かったものの、もし鳴かず飛ばずのままであれば、「会社を私物化した」といって袋叩きに合っていてもおかしくないような人物です。 で、人物としては…… <むしろ計画性があって緻密> そして地道。表面的な荒さばかりがクローズアップされますが、確かにそういう時もあります。 しかし、製品発表の期日を守るためには、関係者に徹夜や休日出勤を強要してでも、そこに合わせていく。そして、自分がAppleに復帰するために、それはそれは綿密な根回しを行って取締役に就任し、そしてまた少しずつ現職の役員を追放していく。執念というか、根気というか… <シンプルさの追求> 元々の思想や禅の影響から、「洗練を極めれば簡素になる」という言葉を20代の頃から言っていて、そのやり方が生活まで含めて彼の人生の最終的なキーワードになっていると思います。本書に掲載されている写真にもあるのですが、シンプルさを求めることに加えて完璧主義者なところもあって、引っ越した家ではいつまでも家具が買えず、マットレスで過ごしたそうです。そんなことよりも、我々が現在使っているApple製品を見れば、その思想は一目瞭然でしょう。 <二面性> 平気で人を罵倒する … かと思えば … その後言い過ぎたかどうかをクヨクヨする。 熱く激しい言葉で力説する … かと思えば … 泣き落としの手法を使う。 即断即決で物事を「白か黒」に評価する … かと思えば … 誰が見ても分かるぐらい優柔不断になる。 納期を守るために関係者に徹夜を強要する … かと思えば … 土壇場で発売日を延期する。 人のアイディアをクソミソに罵倒する … かと思えば … 2週間後に自分のアイディアかのようにそれを採用する。 製品によって「社会を変えたい」「人の役に立ちたい」と願っている … かと思えば … 慈善事業には否定的。 年棒1ドルの報酬で働いている … かと思えば … 膨大なオプション(株)を巡って取締役と争っている(これは、きっちり評価されることを望んでいたみたいです。) 老若男女問わず、簡単に扱える親切な製品づくりを心掛けている … かと思えば … 身障者用の駐車場を自分専用かのように利用する。 そんな対局にある表情を持ち合わせています。一般的には「一貫性」などといって、一本気であることが良いように言われますが、その都度この両面を使い分けることに「一貫性」があった特異な人物だと思います。 <相反する特性の交差点に> 理系 <> 文系 直感 <> ロジック スペシャリスト <> ゼネラリスト 一般的には相反するこの特性の両面を持っていました。だからこそ、幅広い部門の統括が可能だったし、描けるビジョンも壮大だったのかもしれませんね。(いや、これも一般的には「知ってる範囲」が広ければ広いほど、その中に収まってしまったりするのですが… だからこそそのすごみを感じます。) <常に死と向き合っていた> 「来る日も来る日もこれが人生最後の日と思って生きるとしよう。そうすればいずれ必ず、間違いなくその通りになる日がくるだろう」10代でジョブズが出会った言葉だそうです。その後、ジョブズは毎朝欠かさずに鏡に向かって「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日の予定は本当に私のやりたいことだろうか?」と確認したそうです。この質問に対する答えがNoが何日か続くと、そろそろ何かを変える必要があると考えていたのだそうです。 死は「我々全員が共有する終着点」と捉えており、さらには「死はおそらく生が生んだ唯一無比の最高の発明品」として捉え、死によって古きものを一掃して新しきものに道筋を作っていく働きのあるものと言います。 こうして考えてみると、ジョブズの思想はApple製品にそのまま反映されていますよね。それほど影響力が強かったのでしょう。逆に言うと、今後Appleから今までのような革命的で誰もが欲しがるような製品が生まれるのかどうかが心配になります。 最後に… ジョブズは死が間近になってから神の存在を“少しだけ”信じるようになったそうです。 「それはきっと来世を信じたいからだね。つまり死んだとしても、全て消えるわけじゃない。これまで積み重ねてきた知恵。それは生き続けるんだ。でも、時々、人生が単なるオン・オフスイッチのように思えるんだ。クリック。そして消える。だから、私はアップル製品に電源のオン・オフスイッチをつけなかったのかもしれないね」 と。このくだりは泣けました。 僕が持っているMac book airとiPhone4。 今後は、そのディテールに注目しながらジョブズの息吹を感じよう、心の底からそう思いました。 改めてご冥福をお祈りします。安らかに。