書評…編集者という病…顰蹙は金を出してでも買え
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序章 悲惨の港を目指して―暗闇のなかでの跳躍
第1章 SOUL OF AUTHOR
第2章 SOUL OF EDITOR
第3章 SOUL OF PUBLISHER
オンリー・イエスタディ あとがきに代えて---
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「顰蹙は金を出してでも買え!」
過激なスローガンを掲げて見城氏が創立した幻冬舎は、驚異的成長を続け、沈滞する文芸出版界に強烈な衝撃を与え続けている。その見城氏が、半生の生き方と仕事の仕方を振り返り、七転八倒と感動と苦悩の日々を惜しみなく書き綴った類希な自伝。
尾崎豊との出会いー仕事ー別れに始まり、坂本龍一、石原慎太郎、村上龍、五木寛之、中上健次、松任谷由実、など綺羅星の如く並ぶ物書きたちとの深い交流とドラマチックな日々。現役の編集者が作家たちの素顔をここまで踏み込んで書いたモノはないと思います。。
人にはそれぞれの生き方があります。
しかし、この本を読んで、「お前は本気になって生きてるのか?」、そう聞かれた気がしました。
それぐらい、見城氏の生き方は壮絶ですし、仕事への体重のかけ方はハンパじゃない。
「顰蹙は金を出してでも買え!」
「新しく出ていくものが無謀をやらなくて、一体何が変わるだろうか?」
「常識は、僕より無謀です」
そんな言葉も、見城氏自身の経験値から導き出された言葉。
先日、カンブリア宮殿に出演されたときも言っていました。
「極端にこそ価値がある。
リーディングカンパニーが作った常識の中でやっていても、
“あいつはよくやってる”と言われるだけで、何も嬉しくない。
“あいつは一体何なんだ。何をやっているんだ!?
と、言われて、初めて価値がある。 」
私の解釈では、「極端で無謀なことをやればいい」という訳ではないと思います。
これは順序が逆で、成果を残すために、憂鬱になりながらも考えに考えて、圧倒的努力をしていくと、結果として極端なものが出来上がる。
極端なものが出来上がれば、個性を感じてもらえ、大きな成果に繋がる。
そんな流れでしょうか。
あと興味深かったのは、見城氏が「死」と向き合っている事。
多くの作家の死に直面してきたからか、自分の人生を「70年」と定めて、余生のカウントダウンをしています。
しかも、恐らく自分は「自殺」するだろうと。
成功者と呼ばれる人たちの著書を拝見すると、なぜか共通して「死期」を設定しています。
自分の人生にも期限を設けて、それまでにやりたい事、やるべき事の全てをやるつもりで計画を立てているのでしょう。
もちろん、その通りにはならないと思いますが、自分の人生設計がはっきりしている証拠だと思います。
しかし、見城氏のように「死に方」までリアルに想像している人は初めて。
しかも「自殺」。
自分の人生と向き合い、死への恐怖を埋めるために生きているのだと。
想像を絶する境地ですが、だからこそ人並み以上のバイタリティが生まれるのかもしれません。
誰もが見城氏のような、生き方が出来るわけではないと思います。
しかし、本質的な部分でも物事の考え方や、仕事への取り組みは大いに参考になると思いました。